1 シンポジウムの趣旨
シオジ森の学校が、2006年に創立以来、15周年を迎えた。
これまで、小金沢シオジの森をメインフィールドとし、「森で遊び、森に学び、森を育てよう」を掲げ、キャンプやトレッキング、動植物の観察会、林業体験など、森の恵みを楽しんできた。
ところが、10年ほど前、200年生以上のシオジが群生する、長沢沿いを覆っていたスズタケに花が見つかった。翌年から、あたり一面のスズタケが花をつけ枯れ始めた。この間3年前後。長沢周辺の全面が枯れたのち、いまだに蘇生しないまま今日にいたっている。
ササが枯れ、予想していなかった現象が、シオジ群生地周辺に見られるようになった。
もっとも、顕著なことは、ニリンソウなど草本類がめっきり少なくなり、ハシリドコロやバイケイソウなどの毒草類が繁茂するようになったことだ。同時に、シカの食害にによって、シオジの若木が絶えてしまい、毎年梅雨明けには、いたるところで見られたシオジの実生も、なかなか見られなくなってしまった。さらに近年は、長沢左岸の一部で、雪解け時期や台風の季節には、土砂の崩落が始まり、群生するシオジに倒れるものがでてきた。
スズタケの再生は、いつになったら始まるのか。それともすでに始まってはいるが、新芽のうちにシカの食われてしまっているのか。それとももっとほかの原因なのか。このような状況の中で、200本余りのシオジの群生を維持することができるのか、考えてみたい。
シオジ林の保全を考えるにあたり、押さえておかなければならないのは、この群生は天然林であり、人手をかけ育てたものではないということ。長沢沿いの自然条件が、シオジの成長にとって他の樹種より勝っていたからに他ならない。そのうえに、この地域に生息する野生動物を交えた生態系を作り上げてきたことを、見落としてはならない。シオジの樹齢から逆算して200年から300年ほど前のこの地の生態系と同じとは、必ずしもいえない。常に自然は変化するととらえるなら、自然の摂理に委ねるべきであろう。
しかし、一方で保全することにより、現在の生態系を維持しようとするとらえ方も、貴重である。絶滅危惧種の保護活動にみられる幾多の事例や、外来種の排除活動に見られるように、小金沢シオジの森の現状を保持することは、この地に暮らす野生動物の存続を促し、植生の多様性も維持できるからである。シオジの倒木を防ぐためにも、土砂の流失を防ぐスズタケの復活は必須であり、スズタケは、この地に住む動物たちの棲み処であったり食糧であったりすることをわすれてはならない。
このように、保全を図ることの是非と、保全するなら、どのような方途が考えられるのか、また、このような活動をどのように進めるべきか。識者の皆さんにお集まりいただき、これからの小金沢シオジの森のあるべき姿を描きたい。
2 主 催 シオジ森の学校
3 後 援 山梨県・山梨県教育委員会・山梨県緑化推進機構・
地域教育「明日の風」
大月市・大月市教育委員会・大月市観光協会・粟井英朗環境財
大月ロータリークラブほか (申請準備中を含む)
4 開催日時 2021年4月18日(日)13時~16時(開場12時45分)
5 会 場 大月市民会館 3階 講堂
6 登壇者 (50音順・敬称略)
小松澤 靖(山梨県森林環境部県有林課・課長補佐)
長池 卓男(山梨県森林総合研究所・主幹研究員)
永田 恵 (日本山岳遺産基金・事務局)
萩原 康夫(昭和大学富士吉田教育部・准教授)
(司会)天野 文義(シオジ森の学校・プログラム作成委員長)