大峠から長沢群生地に向かうには、石小屋沢にそって雁ヶ腹摺山の山腹を歩く。曲がりくねってはいるが起伏は少ない小道を1時間半ほど行くと、長沢出合いに至る。ここが長沢群生地にある観察路の起点となる。
長沢出合いまでの道は、途中で荒出し沢を横切る。この沢を横切るあたりから、シオジの巨樹が見られはじめ、長沢に近づくと、一挙にその数が増す。
ところで、長沢群生地の観察路は、草本・木本の分布の傾向から、次のように区分けできる。
こんがらがってしまいそうだが、観察路を一度でも歩いた方なら、分岐にある道標を思い出してもらうとよい。シオジ森の学校編集の『シオジの森 フィールドマップ』が手元にあれば、それで確かめることもできる。なお、「お弁当広場」は、大樺の頭と長沢出合い、それに林道に向かう三叉路にあたるが、編集にあたった酒井將年さんが名づけたニック・ネームである。因みに、私たちが「トウゴクミツバツツジの回廊」とよぶ一帯は、オコジョの写真撮影者でもある都留文科大学 別宮有紀子教授が名付け親である。
観察路を 時計と逆にまわるなら、前半はシオジを見ることはない。後半、沢沿いに、長沢分岐まで戻る行程が、シオジの群生地だ。シオジだけを見れば満足というなら、長沢沿いの往復をされるだけでよい。
それでは、地域の特色をみてみよう。
様々なカエデがあり、コナラやブナの木なども交じる。その先には、「トウゴクミツバツツジの回廊」がみられる。また、ムササビの食痕のある葉や、クマだながみられることが多い。観察路では、イワタバコもみられる、ほぼ平坦な山腹の道だ。
尾根道をくだる。おもな木本の構成は、ブナ・イヌブナ・ウリハダカエデなど。尾根道から長沢側は天然林。通称「みくぼ(三窪)」と呼ばれる方向へは、カラマツの人工林が広がる。ギンリョウソウはこの辺りでみられる。ニリンソウの群生が多いのもこの地域。
シオジの巨樹が集中している。長沢分岐周辺では、ニリンソウとヤマトリカブトが混在し群落をつくり、バイケイソウも目立つ。高木では、シオジ以外はサワグルミが占める。シオジやサワグルミの実生もこのゾーンが最大。オコジョもここに現れる。
数年前までは、ニリンソウの群生やシオジの若木も見られたが、近年は減少。梅雨明けには、シオジの実生であふれる。また、周囲の岩もシオジの巨樹の根元も全面鮮やかなコケに覆われる。ササ枯れの影響か、近年シオジの倒木が目立つ。
ところで、長沢群生地に観察路が作られ始めたのは、山梨県の「シオジの森整備台帳」によれば、2001年のことである
観察路林道側の入り口から、長沢に沿って進み、長沢分岐まで、1508Mができあがった。翌年には、大樺の頭近道分岐からお弁当広場まで986Mが整備された。
2005年になって、残りのお弁当広場から長沢分岐まで、950Mができあがった。3444Mの観察路が完成するまでに、5年の歳月が必要であった。
観察路や林道にまつわる話は、ほかにもたくさんあるのだが、今回はこの辺りで。
(下澤直幸)
*写真提供は、「グループ 森からのおくりもの」
【小金沢シオジの森四方山話】 次回は、6月上旬に掲載予定