• 県有林「小金沢シオジの森」及び周辺の森林をフィールドに、様々な森林体験プログラムを用意しています。

「小金沢シオジの森」とは別に、もうひとつ「荒出し沢」周辺にシオジの群生地があることは、「小金沢シオジの森四方山話」の初回で取り上げた。

見つけた当座、長沢と区別するため「もうひとつのシオジの森」とよんでいた。これからは、それぞれ「小金沢シオジの森 長沢群生地」と「小金沢シオジの森 荒出し沢群生地」というのは、どうだろう。これでは余りにも長いというなら、略称として、「長沢シオジの森」と「荒出し沢シオジの森」としたいが、いかがなものか。

ところで、シオジの森というと、シオジの純林地帯のように思われるが、そうではない。「小金沢シオジの森」のふたつの群生地は、同じような条件を好むサワグルミなどと混在している。ただ、いずれの群生地ともシオジがもっとも多くみられる樹種ということだ。

沢から離れるにしたがい、シオジやサワグルミに代わって、ブナ、ミズナラや、さまざまなカエデなどがあらわれる。

「長沢シオジの森」の観察路を歩くと、広葉樹の樹林帯に続いて、カラマツの群落がとつぜん広がる地域がある。行列するかのように並んでいるので、人の手が加わっていることが分かる。ここは、大樺の頭近道分岐からお弁当広場に向かう尾根の長沢と反対側の斜面、小俣正次先生の話に当てはめるなら、通称「ミクボ」といわれる一帯だ。

 山梨県県有林課によれば、この辺りのカラマツは、1971年から10年間にわたり植えられた。植林されて、すでに50年ほどの時間が流れた。それまでは、この地は天然林の森であったに違いない。かつて尾根の周辺では、長沢寄りにある樹種と同じような広葉樹が繁茂したであろう。「ミクボ」と語られた沢沿いは、シオジやサワグルミが茂っていたのではないか。皆伐し、そのあとに植林したのがカラマツということだ。

カラマツは強い樹種だ。2400Mほどある富士山の森林限界の先端に、もっとも早く活着するのが木本ではカラマツの実生である。

カラマツにとって、何よりも必要なのは充分な日光なのだ。日光さえ十分に当たれば、低温にも耐え、水分がわずかしかなくても、肥料分もない火山の噴出物地帯にも、しっかりと根をはり成長する。

それでは、弱点がないかといえば、あるのだ。潤沢な日光を欲するカラマツ林の中では、自身の子孫を増やせないことだ。カラマツが枝を伸ばし幹を太らせると、地面に落ちた実生を育てるだけの光が届かない。富士山の森林限界付近の堂々としたカラマツ林では、日光をそれほど必要としないシラビソの稚樹が育っている。長い年月をかけ、順次、カラマツの森はシラビソの森へと移りかわるのである。もっともこちらは天然林の世界のこと。

 「長沢シオジの森」のカラマツ林は,これから人手をくわわらなければ、どうなるのだろう。

 100年の単位で考えるほど遠い先のはなしだが、カラマツのあとを受け継ぐのは、どんな樹種なのか。尾根道の観察路からは、カラマツに交じり、ちらほらホウノキが見られるが、自然の摂理に従うほかはない。もちろん、経済林として皆伐するなら、また別の筋書きになる。

                            (下澤直幸)

追記 今回は適当な写真がありません

入手できた時点で、掲載します

【小金沢シオジの森四方山話】 次回は、4月下旬に掲載予定


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